ここでは、フィルム加工を依頼する際にVE提案を受けるメリットや、VE提案における注意点を解説します。
VEは、バリュー・エンジニアリング(Value Engineering)の略称で、日本語では価値工学と表現されます。受注側の観点から商品・サービスの価値を高める提案を行うことを意味しており、幅広い分野で取り入れられています。
VE提案は、既存の商品・サービスの機能や品質の維持・向上を図るものや、現状を維持しつつコストダウンを目指す提案などが一般的です。発注者にとってはメリットが多く、フィルム加工においても機能向上やコストダウンが期待できます。
VE提案と似た言葉にVA提案があります。いずれも考え方はほぼ同じですが、VA提案は価値向上を目指して商品・サービスを新たに開発するのに対し、VE提案は既存の商品・サービスの価値向上を目指します。そのためターゲットや提案手法が異なります。
VE提案のメリットは、コストダウンや製造時間の短縮を図れる点です。フィルム加工の場合、使用する素材や加工方法を見直すことでコストを削減したり、従来より効率的な製造を実現したりできる可能性があります。プロジェクトへフィルム加工会社が参加するため、こうした提案を受けることも可能なのです。製造コストが下がることで利益率が改善されるほか、製造時間短縮によってスピーディな製品の提供も可能となります。
VE提案は、受注側(プロ)の視点でフィルム加工に関する各種提案を受けられます。従来の手法では、発注側がコスト削減の方法などを受注側に相談・提案しますが、VE提案は逆で、プロの立場から適切な方法を提示してもらえます。
また、第三者の視点からアドバイスを受けられるため、改善案を提案してもらえるのもメリット。新たな視点が生まれることで、これまでとは違った手法が見つかる可能性もあります。
VE提案は、商品・サービスの機能や品質、コストなどを総合的に判断し、価値を維持・向上させることを目的とした手法です。多面的な視点で提案を受けられるため、品質の適正化を目指せます。コストと品質・機能のバランスが取れた製品へと改善できるでしょう。
VE提案を受ける際は、タイミングに注意しておきましょう。フィルム加工の場合、試作品を製作している段階で提案を受けることが望ましいといえます。完成間近の段階で提案を受けると、大幅な仕様変更が必要になる可能性があるためです。プロジェクトへ影響するリスクもありますので、なるべく早めに相談することをおすすめします。
VE提案は、プロの視点から改善策などをアドバイスしてもらえる一方、必ずしも成功するという保証がありません。VE提案の段階では、提案したフィルム加工の手法が製品にどう影響するのか未知数です。実際に試してみないと分かりませんので、何らかのトラブルが起こる可能性もあります。提案を受けた際は、社内で慎重に検討しましょう。
フィルム加工会社は多数ありますが、VE提案に対応していないところもあります。VE提案は知識や経験、技術力などが問われるため、加工会社によって対応の可否が生じるのです。いずれにせよ、まずはコストダウンや機能改善を測りたい方は、フィルム加工会社へ相談してみるとよいでしょう。
ここからは、フィルム加工におけるVE提案の事例をご紹介します。
無添加フィルムのダウンスペックを提案した事例です。無添加フィルムは添加剤による不具合を抑制できる一方、機能面で使い勝手が悪いフィルムもあります。そのため、要望に合わせてダウンスペックを提案し、2割のコストダウンを実現しています。
金型コストのVE提案事例です。トムソン型とトムソン刃による抜き加工はコストが安い反面、寸法精度に欠けるデメリットがあります。そうしたデメリットを解決するために、トムソン刃の代わりに彫刻刃を提案。寸法精度を高めつつ、金型による抜き加工と比較してコストダウンを実現しました。
VE提案の可否はフィルム加工会社によりますが、事例を掲載していない会社でも、依頼時に相談すれば価格や要望に合わせてくれる場合もあります。コストや機能でお悩みなら、フィルム加工会社の実績や納品スピード、加工精度などを見比べ、気になる会社へ連絡・相談してみましょう。
公差実力値±0.05mm程度(素材・形状による)
社内保有素材の場合は最短即日納品可能(目標6時間)
自社開発の生産設備を多数持ち、金型・治工具の内製化ができる体制により、開発・試作~量産と、製品開発を段階ごとにサポートできる。
今後、より求められる技術ニーズを捉えた、フィルムや金属箔などの加工実績があり、歩留まりの改善・難加工材への対応を実現。
±0.05~±0.3
場合によって即日対応するケースあり。通常、納期の目安は平均1週間程度。
ISOクラス1(1m²に0.1ミクロンのホコリが10個以下)のスーパークリーンルームを完備、医療品分野などでマストとされる要件を満たした加工環境を持つ。
PDMS(ポリジメチルシロキサン)成形や高精度の貼り合わせ加工、アッセンブリ、パッケージングまでワンストップで対応でき、短納期を実現。
打ち抜き規格±0.1mm(実力値では±0.05)対応可能
保有設備で対応可能な場合、最短当日出荷
打ち抜き加工のみならず、貼り付け・貼り合わせ・スリット・ラミネート・脱泡など幅広い加工に対応でき、取り扱い材料も多岐にわたる。
開発・試作段階から相談可能で量産試作~量産と製品開発を段階ごとにサポートでき、依頼企業の構内での製造・生産管理・設備のメンテなども受託可能。
【選定条件】
「フィルム加工メーカー」で検索し、公式サイト内で「プレス加工」「打ち抜き加工」に対応していることを明記している54社から、最短当日出荷が可能で、加工精度を明記し、さらに高機能フィルムにも対応する3社を選定。
(2022年2月9日時点)