スパッタリングターゲットとは?

こちらでは、スパッタリングターゲットについて分かりやすく解説しています。ターゲット選定の際のポイントやスパッタリング技術が活用されている製品などをご紹介します。

スパッタリングターゲットとは

成膜技術のひとつである「スパッタリング法」で、薄膜の形成を行う際に使用する材料のことを、スパッタリングターゲットといいます。

ちなみに、スパッタリング法では、真空中でイオン化させたArなどをはじめとする不活性ガスを、ハイスピードでぶつけることによって、原子をスパッタリングターゲットの表面から叩き出します。その原子を、基盤などに付着させて成膜していきます。

高融点金属・合金などの蒸着法だと難しい材料であっても成膜が可能で、しかも、広い面積にムラなく仕上げられるという特徴があります。

スパッタリングターゲットの選定について

おさえておきたい選定ポイントが3つあります。

【ポイント1】反りが小さいものを選定する

金属系で粘性のあるターゲットを選ぶようにしましょう。熱膨張差によって生じる反りが小さい場合が多いからです。反りが起こりやすいものを選んでしまうと、割れたり、ターゲットを貼り付けているはんだやバッキングプレートが剥がれたりするリスクが高まります。

【ポイント2】強度が高いものを選定する

プレートを冷却する際、直接冷却を行う場合には特に、ターゲットに強度が必要になります。というのは、バッキングプレートに水圧がかかり続けると反りやすくなり、その影響を受けたターゲット材料が割れてしまう可能性があるからです。

圧力は想像以上に強いため、注意が必要です。たとえば、ターゲットの大きさが直径30センチの場合、バッキングプレートにかかる水圧は2〜3トンほどにもなります。

参照元:Dexerials|ターゲット材料の「反りによる割れ」を防ぐ(https://techtimes.dexerials.jp/elemental-technologies/target-technology-for-sputtering/#i-2

【ポイント3】用途に適した種類のターゲットを選定する

ターゲットには複数の種類があるため、どういった目的に使用するかによって、選定すべきターゲットが異なります。スパッタリング技術を用いる製品にどのような特性を付与できるのか、あるいはどのくらいの強度が必要なのか、といった点をふまえて選定することが大切です。

スパッタリング技術が用いられる製品について

製品例の一部について解説していきます。

反射防止

車のフロントガラスや、モニターディスプレイ、光ファイバーケーブルなどに反射防止膜が形成されています。近頃ではさらに、フィルムや樹脂などにもスパッタリング技術が活用されるようになっています。ターゲットは主に、フッ化マグネシウムや二酸化ケイ素などです。酸化チタンが組み合わされる場合もあります。

消臭

銀やチタン、酸化チタン、ハイドロキシアパタイトなどをスパッタリングターゲットにすると、製品に消臭性を付与することが可能です。また、銀の抗菌性を活かし、スポーツウェアに用いる場合もあります。

スパッタリング技術の進歩について

スパッタリング技術は着々と進化を続けています。ここでは、進化によって生まれた技術を2つご紹介します。

超微細孔の中に薄膜をつけるための技術

スパッタリングといえば、もともとは平面に薄膜をつけるための技術のことでした。けれども現在では、超微細孔の中に薄膜をつけることができます。次のような工夫をすることで、この技術が誕生しました。

アルゴンを使わない「セルフスパッタ」

スパッタリングではアルゴンを使用する場合が多いです。けれども、稀に、薄膜内にアルゴンが取り込まれてしまう問題が起こります。この問題を解消するため、アルゴンを使わずにスパッタリングできる「セルフスパッタ」という技術が開発されました。金や銀、銅などの金属自身のイオンによってターゲットをスパッタリングする技術です。

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