電磁波シールドフィルムについて

電磁波シールドの目的や電磁波を防ぐ原理とともに、電磁波シールドフィルムの特徴や電磁波シールドめっきとの違いなどについて紹介します。

電磁波シールドとは

電磁波シールド(electromagnetic shielding)とは、電磁波が特定の空間や装置に浸透したり干渉したりすることを防ぐための資材や技術を指します。電磁波とは、電界と磁界が相互に作用して空間を伝わる波のこと。

空間を伝わるエネルギーの一種で、電子機器や電力線、雷などの自然現象によって生成されることもあります。このような電磁波はほかの電子機器に干渉し、機器の性能低下や誤作動を引き起こすことも。電磁波シールドの目的は、電磁波発生源と保護すべき領域や装置との間に障壁を作ることです。

航空宇宙、軍事、医療、家電などさまざまな分野で使用されていて、電子機器やシステムが正常に機能するために重要な役割を果たします。

電磁波シールドの目的

近年、電磁機器やシステムがあらゆる分野で普及するようになりました。それにより電磁波干渉の危険性が急速に高まっていて、効果的な電磁波シールドがこれまで以上必要となっています。電磁波シールドの活用により、電子機器やシステムの性能・信頼性を向上させることが可能です。

また、医療機器や航空電子機器などは、電磁波干渉で潜在的な危険を引き起こすこともできます。電磁波シールドを活用することでこのようなリスクを減らし、人と機器の安全を確保することができるでしょう。

電磁波を防ぐ原理

さまざまな要因によって効果が異なる

電磁波シールドを実現するためには、伝導性素材と磁性素材、またはその組み合わせを使用するなどの方法があります。銅やアルミなど伝導性素材は、電磁波を反射するシールドを作るために使用可能です。また、鉄やニッケルのような磁性素材は、電磁波を吸収・変換するために使用できます。

電磁波シールドの効果は、該当電磁波の周波数や強度、素材の特性などの要因によって異なります。希望する保護レベルを達成するため、場合によっては複数のシールドが必要になることもあります。

電磁波適合性

電磁波適合性(EMC)とは、電磁機器やシステムがほかの機器やソースからの電磁波干渉(EMI)があっても正常に動作する能力のことです。EMCは、適切な接地とシールドを含む設計原則の組み合せで実現することができます。

EMC実現のためには、シールドを念頭に置いて電子機器やシステムを設計することが必須です。また、適切なフィルタリングを使用することで信号品質やデータ伝送に対するEMIの影響を減らすこともできます。

電磁波シールドフィルムとは

電磁波シールドフィルムとは、電磁波ノイズを遮断することができるフィルム状のシールド材のことです。電磁波シールドフィルムは、メーカーによってさまざまな商品があります。例えば、プラスチックなど絶縁性材料を基材として片面または両面に金属フィラーを拡散させたものや、金属膜を蒸着させたものなどです。

一般的には薄くて柔軟性があるプラスチックを使用しているフィルムが多いため、屈曲性が高いという特徴があります。そのほかのメリットは薄くて軽量である点や、商品によっては放熱・UVカットなどの効果があることなど。デメリットは、物理的な耐久性が低いことです。外部からの衝撃に弱いため、大きな外力がかかる部材には使用できません。

柔軟性や屈曲性、軽量である点を生かし、電磁波シールドフィルムはスマートフォンのフレキシブル基板(FPC)のようなノイズ対策、小型化・軽量化・省スペース対応が求められる機器に適用されることが多いです。

電磁波シールドめっきとの違い

電磁波シールドめっきとは、めっき技術を活用した電磁波ノイズの対策方法のことです。多くの製品の部品は軽量化のため、金属の代わりにプラスチックを採用しています。電磁波シールドめっきでは、金属をめっきすることで耐食性や耐熱性などにおいて金属と同じような機能性付与を実現し、ノイズ遮断を行います。

電磁波シールドめっきのメリットは、複雑な形状でも均一な膜厚で処理できることや、小型の製品にも適していることなどです。デメリットは、ほかのシールド材より高コストになりやすいことや、めっきをする素材によっては業者が限定されることなど。電磁波ノイズの遮断とともにプラスチックの物性を活かすことができるため、用途の幅が広がるでしょう。

工業製品向けの電磁波シールドフィルム

FPC基板向け電磁波シールドフィルム

銅箔構成品、総厚8μmの軽薄設計、屈曲に適した特殊製品、屈曲に適した特殊製品など豊富なラインナップの電磁波シールドフィルムがあります。スマートフォンなどのモバイル機器に搭載されるFPCや、実装部品など用途に合わせたノイズ対策が可能です。また、設計自由度を高めるオプション材料にもさまざまなものがあります。

参照元:JX金属|電磁波シールドフィルムラインアップ(タツタ電線)(https://nmmjx-dc.com/products/e_shield/lineup.html)

5G通信機器向け電磁波シールドフィルム

東レでは、フィルム成形で培ったナノ積層技術を活用したポリエステル製のミリ波吸収シートを開発しました。金属を使用しないため、従来のミリ波吸収シートと比べて、厚さは5分の1以下、質量は約10分の1と薄くて軽量。価格も抑えられる可能性があり、電波障害対策として5G向け通信機器への適用を想定しています。

参照元:日経クロステック|東レが金属を使わない電磁波吸収シート、5G電波障害対策に(https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01537/00908/)

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