工業分野で多用されているエンジニアリングプラスチック。ここでは、エンジニアリングプラスチックのメリットやデメリット、種類などを解説します。
エンジニアリングプラスチックとは、工業分野向けに開発されたプラスチック樹脂の総称です。エンプラとも呼ばれています。高い耐熱性と強度、曲げ弾性率を備えており、厳しい条件下でも使うことが可能です。
工業で使われるエンジニアリングプラスチックと、日用品に用いられている一般的なプラスチックは、基本的に異なるものです。特に異なるのが耐熱性で、高温に耐えられるかどうかが変わります。
一般的なプラスチックは、高い温度で利用することを想定していません。一方のエンジニアリングプラスチックは、耐熱温度が100〜150度と高く、耐熱性が求められる工業分野で広く使われています。なお、エンジニアリングプラスチックは高温を加えると溶け、冷めると固まるという特性も有しています。この特性を活かし、射出成形したり、シート状へ加工したりすることも可能です。
また、高い張力を持つ点もエンジニアリングプラスチックの特徴。一般的なプラスチックと比べ、引張方向に対する高い耐久性を備えています。種類によっては、100MPaを超える張力があります。
エンジニアリングプラスチックは、熱や衝撃、摩耗などに強いというメリットを備えています。
プラスチックは、熱や衝撃、圧力などが何度も加わると、少しずつ素材が劣化していってしまいます。エンジニアリングプラスチックもこうした劣化は避けられませんが、一般的なプラスチックよりも熱や衝撃などに耐えられます。素材の劣化も緩やかなので、使用環境によっては長期間耐えることが可能です。
一方、エンジニアリングプラスチックのデメリットとなるのが価格です。一般的なプラスチックよりも製造コストが高く、フィルム加工にかかる費用が膨らんでしまうおそれがあります。価格は今後解決が必要な課題といってもよいでしょう。
また、金属と比べて耐熱性や強度が劣ります。種類によって異なるものの、過酷な環境下で利用する際は注意が必要です。導入する際は、エンジニアリングプラスチックの特性をしっかりと確認し、フィルム加工の適性を判断しましょう。
エンジニアリングプラスチックの中には、「スーパーエンプラ」と呼ばれる種類のプラスチックもあります。
スーパーエンプラは、高い耐熱性を備えているエンジニアリングプラスチックの総称です。明確な定義はないものの、およそ150度以上の熱に耐えるものがスーパーエンプラと呼ばれています。通常のエンジニアリングプラスチックより熱に耐えるため、高温環境下でも長時間使うことができます。そのため、以下のような幅広い分野で用いられています。
自動車や航空機の部品から調理器具まで、さまざまな製品でスーパーエンプラが使われています。また、軸受やギアのように、強度や耐熱性が求められる部分での使用も目立ちます。
ただし、スーパーエンプラは製造コストがエンジニアリングプラスチックより高めです。高性能ではあるものの、コストも考慮して導入の可否を決める必要があります。
エンジニアリングプラスチックの種類は多岐にわたりますが、主に以下の5つが広く使われています。
PAはナイロンのことで、軸受やギアなどの機械部品で多用されています。PCは透明性が高く、その特性を活かしてフィルムやカバーで広く使用されています。
PET・PBTは電気絶縁性が高いため、電子機器や車の電装品で使われることがあります。POMは摩耗に強いことから、軸受やギアなど機械部品に用いられています。変形PPEは軽いうえに強度が高いので、電源のアダプタや車の電装品などで使われています。
エンジニアリングプラスチックと同様に、スーパーエンプラも複数の種類があります。ここでは、代表的なスーパーエンプラをご紹介します。
PPS(ポリフェニレンサルファイド)は、ポピュラーなスーパーエンプラの一つです。耐熱性と強度が高いほか、有機溶剤に溶けにくいことから、耐薬品性も備えています。また、寸法が安定しやすく、加工性が高い特性もあります。
PPSはバランスが取れたスーパーエンプラのため、さまざまな製品に取り入れられるのがメリットです。現に高い耐熱性や加工性などを活かし、自動車のエンジン部品や家電製品、電子部品やスマートフォンなど、幅広い用途に用いられています。このほか、半導体に使われる場合もあります。
一方、他の素材と接着させにくいため、表面処理やメッキ加工などには向きません。曲げるのも難しいため、曲げ加工や曲線を描く製品での使用にも不向きといえます。
PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)は、高い耐熱性を持つスーパーエンプラです。強い衝撃や薬品にも耐えるほか、高い電気絶縁性も備えています。中には難燃性が高いものや、炭素繊維やガラス繊維を追加し、摩耗性や強度を高めたPEEKもあります。
PEEKは、耐熱性や高温にも耐える強度を備えるため、幅広い分野で用いられています。一例ですが、車のギアやワッシャー、航空部品、半導体、医療機器などが挙げられます。このほか、押出成形が可能な特徴を活かし、フィルムやシートで用いられる場合もあります。
しかし、PEEKはスーパーエンプラの中でも製造コストがかなり高めです。導入する際は注意しましょう。
PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂はフッ素樹脂の一つです。代表的なものはデュポン社の登録商標であるテフロンですが、ご存知の方も少なくないでしょう。
PTFE樹脂は高温に耐えるほか、高い耐薬品性や電気絶縁性を備えています。一方で耐寒性もあるため、極端に温度が低い環境下でも使うことが可能です。こうした特性を活かし、フライパンの表面加工や食品などの製造機械、電子部品やコーティング材など、多用途に用いられています。
ただし、スーパーエンプラの中では寸法安定性が低く、成形難易度が高めです。耐摩耗性も低いので、フィルム加工で用いる際は注意しましょう。
PSF・PSU(ポリスルホン)は、医療機器や食品機械などに用いられているスーパーエンプラです。耐熱性や耐薬品性を備えているほか、難燃性の高さがメリットとして挙げられます。また、孔をコントロールしやすい性質を活かし、フィルターで用いられる場合もあります。一方、PSF・PSUは紫外線に弱いため、日光や紫外線にさらされる環境での利用には向きません。
公差実力値±0.05mm程度(素材・形状による)
社内保有素材の場合は最短即日納品可能(目標6時間)
自社開発の生産設備を多数持ち、金型・治工具の内製化ができる体制により、開発・試作~量産と、製品開発を段階ごとにサポートできる。
今後、より求められる技術ニーズを捉えた、フィルムや金属箔などの加工実績があり、歩留まりの改善・難加工材への対応を実現。
±0.05~±0.3
場合によって即日対応するケースあり。通常、納期の目安は平均1週間程度。
ISOクラス1(1m²に0.1ミクロンのホコリが10個以下)のスーパークリーンルームを完備、医療品分野などでマストとされる要件を満たした加工環境を持つ。
PDMS(ポリジメチルシロキサン)成形や高精度の貼り合わせ加工、アッセンブリ、パッケージングまでワンストップで対応でき、短納期を実現。
打ち抜き規格±0.1mm(実力値では±0.05)対応可能
保有設備で対応可能な場合、最短当日出荷
打ち抜き加工のみならず、貼り付け・貼り合わせ・スリット・ラミネート・脱泡など幅広い加工に対応でき、取り扱い材料も多岐にわたる。
開発・試作段階から相談可能で量産試作~量産と製品開発を段階ごとにサポートでき、依頼企業の構内での製造・生産管理・設備のメンテなども受託可能。
【選定条件】
「フィルム加工メーカー」で検索し、公式サイト内で「プレス加工」「打ち抜き加工」に対応していることを明記している54社から、最短当日出荷が可能で、加工精度を明記し、さらに高機能フィルムにも対応する3社を選定。
(2022年2月9日時点)