半導体に使われる絶縁フィルムは、CPUをはじめとする電子機器を支える素材・技術です。どういった特徴をもつフィルムなのか、詳しく見ていきましょう。
ABFは、味の素ファインテクノが開発した半導体用の絶縁フィルムです。
1990年代当時、多くの企業がインク状の絶縁材料を使っていましたが、液体の樹脂をコーティングすると、気泡や印刷ムラなど生産性を下げる要因が発生しやすく、溶剤の揮発によって作業環境を悪化させる問題もありました。
そこで味の素グループは「エポキシ樹脂」に注目し、アミノ酸研究から培ったノウハウを活かしてインクではなくフィルムとして使える絶縁材料の開発に乗り出したのです。
このABFは、1999年に大手半導体メーカーに採用されたことを機に、高性能化するCPUの流れに合わせて継続的に改良が加えられ、絶縁材料として確固たる地位を築きました。現在では、世界中の主要パソコンのCPU基板でほぼ100%のシェアを占めるとされています。
ABFは単なるエポキシ樹脂ではなく、有機物と無機物を微細レベルで均一に分散させたフィルムです。
まず、有機物としてのエポキシ樹脂は熱硬化性が高く、加工しやすいという性質を持っています。そこに硬化剤などの添加物を加え、さらに微粒子状の無機フィラーを配合することで、熱膨張係数の低減や強度の向上などの機能を両立しています。
ABFが画期的とされたのは、インクではなく「熱硬化性フィルム」になっている点です。液状樹脂をコーティングする場合には気泡や塗布ムラなどの問題が避けられませんが、フィルム形状であれば物理的にシートを貼るイメージとなり、均一な膜厚を保ちやすく生産ラインで安定的に扱えます。
また、溶剤の揮発も少なく、作業環境への負荷を減らすメリットもあります。
またABFは「両面同時加工」が可能という点も特徴。液状の材料では片面ずつ慎重にコーティングする必要がありましたが、フィルムならば両面同時に貼り合わせる工程を取りやすく、歩留まりを向上させることも可能です。
特に薄板の基板を扱う場合、両面同時に処理することで基板の反りやねじれを抑えられ、生産効率が高まります。
ABFを用いた場合は、従来の樹脂付き銅箔(RCC)と比較してもファインパターン形成に優位性があります。たとえば、セミアディティブ法やパネルメッキ法などを実施する際に、銅箔を余分に除去する工程が省ける場合があり、工程数を削減できます。これは製造効率やコスト面だけでなく、設計の柔軟性向上にもつながります。
また、レーザ加工の容易さもABFの大きな特徴です。RCC方式ではレーザ加工前に銅箔を除去する手間が必要な場合がありますが、ABFならそのままレーザで穴を開けることができます。
プリント基板の配線を繋ぐために必要なビアホールは、以前はフォトビア用材料という感光性材料で開けられていました。
ABFを用いることで複数の絶縁層を重ねる際に、1-2層間のみならず1-3層間にもビア加工が行えます。ビルドアップ基板の設計自由度を高められるので、高精細なビアホール形成が行いやすくなります。
積水化学のビルドアップフィルムは、FC-BGA基板向けに開発された高性能な層間絶縁フィルムであり、NX04シリーズ(NX04H)およびNQ07シリーズ(NQ07XP)として提供されています。
このフィルムは、ICパッケージ基板における微細配線形成を支える材料であり、高い伝送性能と反り抑制機能を備えています。そのため、高多層・大サイズのハイエンドICパッケージ基板にも幅広く採用されています。
レゾナックの感光性層間絶縁フィルムPV-Fは、フォトリソグラフィを用いて絶縁層のパターンを形成し、500μm角以上のキャビティを作ることが可能です。これにより、銅めっきなどを用いたキャビティ充填が可能。放熱性や導通性を向上させることができるのです。
基板の設計自由度が格段に向上し、より高度な放熱設計もできるでしょう。また、スループットの向上にも寄与し、サーマルビアを狭ピッチで多数形成できるため、高密度実装にも対応しやすくなります。
そのほか、PV-Fは低粘度の特性を持つため、低温・低圧で部品を埋め込むことができ、部品の位置ずれを抑制しながら確実な接続を実現します。これにより、配線接続不良のリスクが低減され、製造プロセスの安定性も向上します。
参照元:味の素グループ|ABF イノベーションストーリー(https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/rd/our_innovation/abf/)
参照元:レゾナック|感光性層間絶縁フィルム(https://www.resonac.com/jp/solution/PV-F.html)
公差実力値±0.05mm程度(素材・形状による) 参照元:オーティス公式HP(https://otis-group.com/blog/290/)
社内保有素材の場合は最短即日納品可能(目標6時間)
自社開発の生産設備を多数持ち、金型・治工具の内製化ができる体制により、開発・試作~量産と、製品開発を段階ごとにサポートできる。
今後、より求められる技術ニーズを捉えた、フィルムや金属箔などの加工実績があり、歩留まりの改善・難加工材への対応を実現。
±0.05~±0.3
場合によって即日対応するケースあり。通常、納期の目安は平均1週間程度。
ISOクラス1(1m²に0.1ミクロンのホコリが10個以下)のスーパークリーンルームを完備、医療品分野などでマストとされる要件を満たした加工環境を持つ。
PDMS(ポリジメチルシロキサン)成形や高精度の貼り合わせ加工、アッセンブリ、パッケージングまでワンストップで対応でき、短納期を実現。
打ち抜き規格±0.1mm(実力値では±0.05)対応可能
保有設備で対応可能な場合、最短当日出荷
打ち抜き加工のみならず、貼り付け・貼り合わせ・スリット・ラミネート・脱泡など幅広い加工に対応でき、取り扱い材料も多岐にわたる。
開発・試作段階から相談可能で量産試作~量産と製品開発を段階ごとにサポートでき、依頼企業の構内での製造・生産管理・設備のメンテなども受託可能。
【選定条件】
「フィルム加工メーカー」で検索し、公式サイト内で「プレス加工」「打ち抜き加工」に対応していることを明記している54社から、最短当日出荷が可能で、加工精度を明記し、さらに高機能フィルムにも対応する3社を選定。
(2022年2月9日時点)