フィルムのリサイクル（film to film）の現状

近年、プラスチック全般に対する社会の関心は、SDGsやESGへの取り組みが進む中で飛躍的に高まっています。世界各国が廃プラスチックの輸入規制を行い、海外への廃棄物輸出が難しくなったことが大きな要因です。そのため、国内でのリサイクル体制の強化が急務となっています。あわせて、排出者責任や拡大生産者責任の議論がさらに重みを増し、排出元の企業が「廃プラをどう再資源化するか」は、もはや避けては通れない課題となりつつあります。

フィルムのリサイクルが難しい理由について

フィルム製品には、商品梱包用の袋や荷崩れ防止用のストレッチフィルムなど、やわらかい質感の軟質プラスチックが多く含まれます。

これらはPE（ポリエチレン）やPP（ポリプロピレン）、PET（ポリエチレンテレフタレート）、PVC（ポリ塩化ビニル）といった素材が入り混じっており、混在状態のままではリサイクル事業者が処理に苦慮することが少なくありません。

分別の難しさなどの原因に

また、リサイクルが進まない要因として、そもそも分別が徹底されていない、圧縮梱包機の導入が進まず輸送効率が悪い、といった現場の課題が挙げられます。加えて、使用済みフィルムを再び製品に加工するためのメーカーが国内にはまだ十分に存在せず、クローズドループ化が難しいという構造的な問題も見受けられます。

かつてはフィルムベールを海外に輸出してリサイクルするケースが多かったものの、バーゼル法改正などの影響により、そうした手段も容易ではなくなりました。

このような背景から、使用済みフィルムを国内で完結してリサイクルする仕組みづくりは、今後ますます重要になると考えられます。

フィルム自体は単一樹脂であることが多く、理論上はリサイクルしやすい素材といえますが、実際の現場では設備不足や分別ルールの未整備などが要因となり、活用が十分に進んでいないのが実情です。

フィルムをただの廃棄物と考えるのではなく、きちんとした手順を踏むことで再資源化し、有効に活用するかどうかの岐路に差し掛かっているといえそうです。

クローズドループを構築するには

クローズドループ（排出元に再び製品として戻る循環）を構築するための取り組みとして、最も重要となるのは、排出企業が「リサイクルに本気で取り組む」という意思決定を行うことです。これがなければ、分別ルールやオペレーションの改善、さらに必要とあれば設備投資などを実行する体制が整いません。

クローズドループ構築のメリット

もしも使用済みフィルムのリサイクルがうまく進めば、企業には大きなメリットも生まれます。廃棄物処理にかけていたコスト削減だけでなく、有価売却の可能性すら出てくるでしょう。

さらに、リサイクルで得た再生原料を自社製品に活用できれば、クローズドループが完成します。再生した製品を自社内で利用すれば、企業イメージの向上やSDGsの推進に直接つながり、顧客や投資家からの評価が高まることが期待できます。

ただし、そのためには信頼できるリサイクルパートナーの存在が欠かせません。使用済みフィルムを再生原料（リペレット）に加工する技術を持つ工場が必要ですし、異樹脂や異物を極力混入させずに高品質の再生プラスチックを製造する技術も求められます。

そのうえで、再生原料をフィルム製品へと加工できるメーカーがそろわなければ、スムーズな循環は難しいでしょう。日本国内にも少しずつリサイクルから最終製品化までをワンストップで支援する企業が増えてきているため、まずはそうした事業者に相談してみるのが有効です。

リサイクルを行わない場合の今後のリスク

負担やコストを理由にリサイクルを行わない選択をしていると、環境への責任を果たしていない企業として見られる可能性があります。

今の時代、投資家や消費者の環境意識は高まっており、環境保全に取り組まない企業は信頼を失いかねません。逆に、クローズドループの構築に積極的に取り組むことで企業価値を高めるチャンスが生まれます。

すでに使用済みフィルムを再生原料化し、衛生用品などに形を変えて利用している成功事例も存在します。そのような先行事例をもとに、自社の環境戦略を具体化していくのも良い方法でしょう。

まとめ

使用済みフィルムを資源としてとらえれば、持続可能な社会と企業の未来に向けた一歩を踏み出せます。

多少の手間やコストは伴いますが、その先に得られるメリットは大きいと考えられます。企業の社会的責任を果たしながら、同時にコスト削減やイメージ向上といった利益を享受するためにも、使用済みフィルムのリサイクルとクローズドループ構築が今後求められるでしょう。