液晶ポリマーフィルム(LCPフィルム)は、もともと溶融状態において分子鎖が規則正しく並ぶという特性を持つ熱可塑性合成樹脂の総称で、「液晶ポリエステル」と呼ばれる場合もある素材です。
アメリカのイーストマンコダック社が、ポリエチレンテフタレートの耐熱性を高める目的で開発したのが始まりで、日本では住友化学工業が工業化を実現しました。
液晶ポリマーフィルムの基本構造としては、パラヒドロキシ安息香酸やエチレンテフタレートなどが挙げられます。しかし、パラヒドロキシ安息香酸の単体ポリマーでは融点が熱分解温度を上回る問題があるため、エチレンテフタレートとのエステル結合によって融点を下げ、実用的な材料として成り立たせています。
独特の自己補強性を持っている点が特徴です。
自己補強性とは、溶融状態にある分子鎖の整列が固化後も保たれることで、高い機械強度や剛性を示す性質のこと。
通常の高分子材料では、分子鎖が絡み合いやすく、溶融・成形後の秩序が失われやすいのが問題です。液晶ポリマーフィルムはその並びが大きく崩れずに固まるため、部品として成形した際にも高強度かつ寸法安定性を確保できるのです。
溶融状態での粘度が低く、高流動性を示す点も特徴的。射出成形時にそれほど高い圧力を必要としないため、複雑な形状でも充填しやすいのです。
冷却固化後は分子の整列が維持されるため、成形収縮率が小さく、寸法精度が高い部品が得やすいのがメリット。こうした加工特性の良さは、電子部品などの微細かつ高密度な成形に適しているのです。
液晶ポリマーフィルムの代表的な成形技術としてはインフレーション法や溶剤キャスト法が挙げらます。
特に溶剤キャスト法では、LCPを特定の溶媒に溶解してから溶媒を除去して薄膜を形成するため、しなやかさと強度を同時に実現しやすいのです。
液晶ポリマーフィルムは電子部品の分野を中心に広く使われてきました。特にコネクタやスイッチ、カメラモジュール、リレー、ボビンなど、多岐にわたる製品に活用されています。
その中でも、PCやスマートフォン、タブレットに搭載されるコネクタ類への使用が液晶ポリマーフィルム需要全体の約6割を占めているとされ、LCPの機械的強度や微細成形性がいかに重要視されているかがわかります。
5Gなどの高速通信分野において、伝送損失やノイズ対策がより一層重視されています。従来のポリイミドは、高周波領域で含水率の高さからくる伝送損失やノイズが課題です。そこで、低誘電率・低誘電正接をもち、吸湿性も低いL液晶ポリマーフィルムが注目されています。
共同技研化学株式会社の「SARAS」などの液晶ポリマーフィルムは、280℃の高融点、柔軟性、高絶縁性などを兼ね備え、銅箔との分子レベルでの接合(エポキシ接着剤なし)による密着強度向上を実現。この技術により、フレキシブル銅張積層板の次世代化が加速し、5Gや6Gの時代に求められる高い通信品質と低ノイズ化を達成できると期待されています。
そのほか、自動車分野でも液晶ポリマーフィルムの利用は進んでいます。車両のEV(電気自動車)化やハイブリッド化が拡大すれば、車内で扱われる電子部品の数は飛躍的に増加。エンジンルームや車載用電子デバイスには高温、振動、化学品など過酷な環境が伴うため、耐熱性や耐薬品性、機械的強度が必要となるのです。
液晶ポリマーフィルムはこうした要求に対応でき、しかも低吸湿性による安定した電気特性を備えているため、センサー類やコネクタ、パワーモジュールなど幅広い箇所に適用が見込まれています。
自動運転技術や遠隔医療、高度なIoT工場など、これから普及するであろう先端技術の多くは、高速かつ安定した通信インフラなしには成立しません。液晶ポリマーフィルムは、それを支える基盤素材として重要性を高める可能性があります。
参照元:KGK 共同技研化学|液晶ポリマー(LCP)フィルム(https://www.kgk-tape.co.jp/products/page4.html)
公差実力値±0.05mm程度(素材・形状による) 参照元:オーティス公式HP(https://otis-group.com/blog/290/)
社内保有素材の場合は最短即日納品可能(目標6時間)
自社開発の生産設備を多数持ち、金型・治工具の内製化ができる体制により、開発・試作~量産と、製品開発を段階ごとにサポートできる。
今後、より求められる技術ニーズを捉えた、フィルムや金属箔などの加工実績があり、歩留まりの改善・難加工材への対応を実現。
±0.05~±0.3
場合によって即日対応するケースあり。通常、納期の目安は平均1週間程度。
ISOクラス1(1m²に0.1ミクロンのホコリが10個以下)のスーパークリーンルームを完備、医療品分野などでマストとされる要件を満たした加工環境を持つ。
PDMS(ポリジメチルシロキサン)成形や高精度の貼り合わせ加工、アッセンブリ、パッケージングまでワンストップで対応でき、短納期を実現。
打ち抜き規格±0.1mm(実力値では±0.05)対応可能
保有設備で対応可能な場合、最短当日出荷
打ち抜き加工のみならず、貼り付け・貼り合わせ・スリット・ラミネート・脱泡など幅広い加工に対応でき、取り扱い材料も多岐にわたる。
開発・試作段階から相談可能で量産試作~量産と製品開発を段階ごとにサポートでき、依頼企業の構内での製造・生産管理・設備のメンテなども受託可能。
【選定条件】
「フィルム加工メーカー」で検索し、公式サイト内で「プレス加工」「打ち抜き加工」に対応していることを明記している54社から、最短当日出荷が可能で、加工精度を明記し、さらに高機能フィルムにも対応する3社を選定。
(2022年2月9日時点)