ダイアタッチフィルムとは?

ダイアタッチフィルム(ダイボンディングフィルム)とは

半導体の分野では、シリコンチップ(ダイ)を実装基板やリードフレームなどに強固に固定することが非常に重要です。この接合に用いられる接着フィルムが「ダイボンディングフィルム」あるいは「ダイアタッチフィルム(DAF)」と呼ばれています。

ダイアタッチフィルムはエポキシ樹脂やアクリルポリマーを主成分とし、熱を加えて一時的に軟化させつつ、最終的には硬化して強力な接着力を維持することが特徴です。

また、ダイシング用テープと一体化しているタイプの製品もあり、「ダイシングダイアタッチフィルム」として、ウェハのダイシング工程とダイ貼り工程の双方を考慮して設計されたものもあります。これにより、貼り合わせ時の仮固定やダイシング後の処理などを効率的に行うことができるのです。

ダイアタッチフィルムが必要とされる背景

半導体チップは非常に繊細であり、さらに近年は超薄型化が進んでいます。以前は 300µm程度の厚さであった半導体チップが、現在では25µmといった極薄レベルまで薄くなるケースも珍しくありません。

半導体メモリの大容量化やシステムインパッケージ化(System in Package)が進行する中、接着フィルムにはいっそう厳しい特性が要求されています。

もしダイアタッチフィルムが十分な性能を備えていなければ、極薄チップ同士やチップと基板との接合不良が生じる可能性が高まります。

例えば多段積層パッケージにおいて、1層あたりの接着不良率がわずかでも存在すると、最終的なパッケージ全体の良品率が指数的に低下。例として不良率をx%としてn層を重ねると、良品率は以下のようになります。

((100−)/100)×100((100−x)/100)n×100

ほとんど0%に近い低不良率を達成しない限り、多段積層パッケージの良品率は大きく向上しないことが現状です。そのためダイアタッチフィルムによる接着品質をほぼ完璧に高めることが、パッケージ量産における課題となっているのです。

また、フラッシュメモリなどの大容量化や、機能を積み重ねたシステムインパッケージが普及するにつれ、用途や環境に応じたさまざまなバリエーションが必要とされることも。ダイアタッチフィルムは「縁の下の力持ち」として不可欠な技術となっているといえます。

ダイアタッチフィルムに必要とされる特性

低温かつ低圧力でのラミネート性

ダイアタッチフィルムをウェハ裏面に貼り付ける(ラミネートする)際、80℃以下の低温で仮貼りできることが望ましいとされます。

半導体チップやウェハは、熱や機械的負荷に対して脆弱であり、特に極薄ウェハでは熱応力や圧力が過度にかかると割れや反りが発生するリスクがあります。このため、ラミネート条件は厳密に制御され、ダイボンディングフィルムにも低温・低圧で適切に貼り付けられる特性が要求されるのです。

ダイシング工程でのバリ・カケ防止

ウェハをダイシングする際、回転ブレードやレーザーを高速で動かしてチップを切り出しますが、その時に欠けやバリが発生しにくいことが必要となります。

フィルムが過度に硬いと切削抵抗が大きくなって不良が生じやすく、また粘度が高すぎるとブレードに付着して切断品質を損なう場合もあります。ダイシング時にフィルムが適切に処理されるような剛性・柔軟性のバランスが欠かせないのです。

ピックアップ工程での剥離性とチップ破損防止

ダイシング後に、チップを一枚ずつピックアップして基板に移す工程があります。この際、接着力が強すぎるとチップを破損させる可能性があるほか、適切に剥がれないと工程が滞る場合も。

また接着力が弱すぎるとチップが途中ではがれてしまい、扱いにくい場合もあります。極薄チップは機械的に脆弱なため、適度に剥離しやすく、それでいて実装工程まで保持できる粘着特性が必要とされます。

リフロー工程での耐熱性

半導体パッケージは最終的に基板にはんだ付けされるのですが、その前にに260~265℃程度で行われるPbフリーはんだリフロー工程があります。

この高温環境で、接着フィルムが剥離や膨れを起こさないことが必須。特に、はんだリフロー中には温度変化が急激に生じるため、フィルムが安定した熱特性を持っていないと、不良発生率が高まるリスクもあるのです。

耐リフロー性を確保することが、高品質の半導体パッケージを得るうえでの条件といえます。

熱膨張係数差の吸収(応力緩和性)

シリコン(チップ)と樹脂や金属(基板)は熱膨張係数が異なります。温度が上昇あるいは下降すると、両者の膨張・収縮が異なり、クラックや反りが生じる可能性があるのです。

ダイアタッチフィルムには、両者の熱膨張係数差による応力を吸収し、パッケージ全体を安定化させる緩衝材としての役割も必要です。過度に硬い接着剤では応力を吸収できず、パッケージの信頼性が低下する恐れがあるからです。

新しい構造のパッケージを開発する段階では、実装ラインで実際にフィルムを試しながら、流動性や弾性率、タック(粘着特性)の適切な範囲を探るアプローチが一般的。シミュレーションだけで完璧に性能を予測するのは難しく、試作と評価を繰り返しながら最適化を行う必要があります。そのため、同一の材料系でも配合比を変えて特性を大きく変動させることができる設計自由度が必要です。

ダイアタッチフィルムに使われる素材

ダイアタッチフィルムの代表的な材料としては、エポキシ樹脂、アクリルポリマー、ポリイミドなどが用いられます。

エポキシ樹脂は熱硬化性が高く、硬化後には強度や耐熱性が向上するのが特徴。ただし、そのままでは硬すぎたり、流動性が十分でなかったりする場合があるため、柔軟性や粘着性を担うポリマーとの組み合わせが検討されやすいです。

加えて、シリカなどの無機フィラーを配合することで、熱膨張係数を低減し、機械的強度や剛性を最適化する設計も行われます。

ポリイミドは耐熱性が優れているものの、粘着特性の調整や低温プロセスへの対応などに課題があり、エポキシ+アクリル系を選ぶ場合が多いです。

実際の半導体パッケージでは、仮貼り段階で適度な粘着を発揮しつつ、最終的には高温で硬化・定着するという二段階の要求があるので、樹脂の熱特性と流動性をどう制御するかが焦点となります。

また、極薄ウェハへのラミネートやブレード・レーザーによるダイシング、ピックアップ工程などに対応するため、未硬化状態でのタックや弾性率を微細にコントロールする必要も。これらを実現するには、単なる理論設計だけでなく、実際の製造ラインでの試験や歩留まり評価が不可欠となります。

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