フィルム加工工場で必要とされるクリーンルームについて

フィルム加工をするのであれば、クリーンルームが欠かせません。このページではクリーンルームの特徴やフィルム加工工場でのレベルなどの情報を紹介します。

【基本情報】クリーンルームについて

まずはクリーンルームがどのようなスペースなのかを知っておく必要があります。

そもそもクリーンルームとは

空気中に浮遊している微小粒子や微生物などが限定された清浄度以下のレベルに管理された空間を「クリーンルーム」と呼びます。さらに空間に入室する材料・商品・水などの物質の清浄度も保たれておかなければなりません。

クリーンルームは用途によって求められる清浄度レベルや除去の対象となる物質も異なり、それに応じた管理が必要になってきます。温度・湿度・気圧・静電気・電磁波・ガス成分などの環境条件の管理が重要です。

クリーンルームの種類

上記のように大きく2つに分けられます。

ICRとは工業に関するクリーンルームのことで、空気中に浮遊している微小粒子を管理しているものです。半導体・精密機械などを製造する工場で活用されています。一方のBCRとは病院の手術室・医薬品や食品の製造などのシーンで用いられているもので、空気中の微生物の管理が目的です。

フィルム加工工場のクリーンルームはどのレベル?

クリーンルームは目的によって清浄度レベルが異なります。

清浄度レベルとは

清浄度レベルは一般的にアメリカ連邦規格Fed.Std.209EとISO基準によって分類されています。1m3あたりに含まれる粒径0.1μm以上の粒子の数でクラス分けが行われており、アメリカ連邦規格Fed.Std.209Eではクラス1~100,000の6クラスに分類し、ISO基準ならISO1~8のクラスに分類されているのです。

ISO1であれば浮遊している微小粒子や微生物がほぼない状態で、ISO8に近づくほど環境条件は緩くなります。またアメリカ連邦規格Fed.Std.209Eのクラス1が、ISO3クラス相当です。

フィルム加工工場の清浄度レベル

光学フィルムのような高品質塗工において、塗布室のクリーン度はクラス100、ライン全体はクラス10,000以下が一般的です。ISO基準で考えれば塗布室はISO2、ライン全体はクラス4レベルだと言えます。通常の生活環境よりも澄んだ環境となりますが、半導体工場などよりは比較的緩い環境でしょう。

参照元:ミドリ安全クリーン静電サイト(https://www.midori-esd.jp/class/)

参照元:アイアール技術者教育研究所 (https://engineer-education.com/roll-to-roll_clean-room/)

他の工場とフィルム加工工場のクリーンルームの違い

近年、半導体業界では局所清浄方式が採用されています。しかしフィルム加工工場では従来の半導体業界が用いていた一方向流方式が採用されるケースがほとんどです。この一方向流方式とは天井に敷き詰められたFFUgというクリーンエアを回し、風を床から回収するという仕組みになっています。

そもそも局所清浄方式を用いないのはフィルムを巻き出し塗工・乾燥するまでの間、それぞれのゾーンをフィルムが通過するからです。そのためゾーンの密閉が難しく、必ずフィルムを隣接しているゾーンを通すためのフィルム孔が必要になってきます。さらにジャンボロールの交換をはじめ、塗工リップなどに手作業が必要になってくるため、どうしても人がホコリを持ち込みやすくなるでしょう。そのため全体をクリーンルームの環境に整える必要があるため、一方向流方式が採用されているのです。

静電気を防止するクリーンルームが用いられる

フィルムの製造工場において、異物が万が一でも混入してしまえば製品の品質低下をきたしかねません。フィルム切断時に発生する切粉「スリットかす」や油圧機器による「オイル噴霧」、微粒子の静電気付着などが異物の要因です。これらの異物混入を防ぐために静電気を防止することが大切になってきます。

対策1:静電気を逃す

静電気拡散性のあるアイテムを工場内に設置し、確実にアースを落とすようにしましょう。ただアイテムによってクリーンルーム対応不可なものや単価が高いものなどもあるので、自社に合ったアイテムを探すのに苦労する可能性もあります。また作業員がリストストラップなどの着用方法を間違うなど人的な問題も考えられるため、注意が必要です。

対策2:静電気の除去

イオンを発生させることで、静電気を除去するイオナイザーを導入するのも方法のひとつです。ただし有効可能な範囲が非常に狭く、クリーンエアとの設置位置を注意しなければなりません。さらに定期的なメンテナンスも欠かせないため、取り扱う際には細心の注意を払いましょう。

対策3:湿度調整

湿度を50%前後に調整することで、クリーンルーム全体の静電気が抑えられるでしょう。ただしコストがかかること、霧吹き方式での管理方法など注意しなければなりません。

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